苗場山台地 大岩山(1946.9m)、檜ノ塔(1881.8m) 2012年4月15日  カウント:

所要時間 5:38 国道405号線除雪終点−−6:14 尾根取付−−6:45 稜線に乗る−−8:30 1714m峰−−9:35 大岩山(休憩) 10:10−−10:34 1825m鞍部−−12:05 檜ノ塔(休憩) 12:59−−14:15 栃川にかかる橋−−14:37 国道405号線除雪終点

場所長野県下水内郡栄村
年月日2012年4月15日 残雪期日帰り
天候
山行種類残雪期籔山
交通手段マイカー
駐車場除雪終点路側に駐車するしかない
登山道の有無たぶん無し(積雪でルート不明)
籔の有無残雪で籔無し。無雪期は激笹藪と思われる
危険個所の有無痩せた岩稜、雪の急斜面あり
山頂の展望そこそこ展望良好
GPSトラックログ
(GPX形式)
無し
コメント 秋山郷より大岩山北西尾根経由で大岩山に登り、苗場山台地西端を横断して檜ノ塔に至り、檜ノ塔南西尾根を下って秋山郷に下る周回ルート。大岩山、檜ノ塔ともネット上で検索してもDJFの1件しかヒットせず、ほとんど登られていない模様。従って無雪期の籔の程度は不明だが、周辺の植生から考えれば濃い笹藪と予想される。

 登り、下りで使った尾根とも等高線が密集した急傾斜で、一般藪山家向けとは言い難い。大岩山の登りでは超急傾斜の痩せた岩場登りも登場する。ただし、この尾根は積雪、藪とも少なく途中まで刈り払いされた道まであり、無雪期でも少なくとも1714m峰までは登れると思われる。大岩山はシラビソ疎林で展望良好。檜ノ塔までの緩斜面帯は樹林が続いて展望なし。地形が読めないので等高線に沿って進んだ。檜ノ塔はピークではなく台地の北西端の崖っぷち。檜ノ塔から下った尾根入口は、最初は尾根がバラけているし傾斜が急で下部が見えないので入口が判断しにくい。尾根に入ってからも標高1750m以下は尾根は広いが猛烈な傾斜で滑れば停止不可能。大岩山の登りで使った尾根より急で、ここを登るのは相当の脚力が必要でかなり厳しい。また、尾根が広いのでルート取りも難しく高度のルートファインディング能力が必要。両山に安全に登ろうとしたら反対側の神楽ヶ峰から苗場山を越えるのが無難。

 先日の降雪で重い新雪が10〜20cm程度積もり、延々とラッセルが続いて非常に疲れた。特に大岩山から檜ノ塔間の水平移動は苦労した。事前に予想された事態であるが、この時期はまだ降雪があるので下界の雨直後ではなく晴れが数日継続した後に入山するのが良い


ルート図。クリックで拡大


国道405号線除雪終点に駐車、スタート 朝日を浴びる鳥甲山
雪に埋もれた林道を歩く ここから斜面に取り付く
何の目印か? 1380m肩が見える
自然林の尾根を登る 絶壁上の大岩山
稜線直下 1240m肩で稜線に乗る
残雪が少ないが籔は薄い 籔を刈った跡。薄いながら踏跡あり
急な1380m肩を越える。一時的に残雪が増える まだ雪も籔も少ない
標高1440mで傾斜が猛烈で痩せた岩場が登場。でも籔に掴まって登る 岩場を登り切ったら目印があった
岩場以降は危険個所無し 石楠花が登場するが薄い
傾斜がきつい区間は雪が少ない それでも徐々に積雪が増える
雲海に浮かぶ米山
やっぱ無雪期は笹藪か 1714m峰直下。やっと傾斜が緩む
1714m峰。これより横移動
1714m峰から見た檜ノ塔 檜ノ塔と下りに使った南西尾根
たおやかな稜線歩き。もう地面は一切見えない 新雪にスノーシューのトレースを刻む
米山と刈羽黒姫山 カモシカの足跡
新雪が深まる 大岩山山頂付近。シラビソ樹林が広がる
大岩山山頂 大岩山から見た東方向
大岩山から見た谷川岳方面と奥日光、尾瀬(クリックで拡大)
大岩山から見た後立山、立山、劒岳(クリックで拡大)
大岩山から見た苗場山台地。でかい
大岩山から見た上越国境山脈
東に向かう
この台地を横断する
上越国境山脈
きれいな風景だが新雪が重い 1825m鞍部
台地西縁を水平に北上。樹林が続き展望が無い
たま〜に開けた場所に出る。たぶん湿地帯 いくつか谷を横断する
開けた場所から大岩山を振り返る
台地途中の開けた場所から見たから見た北半分の展望(クリックで拡大)
檜ノ塔への最後の登り 檜ノ塔山頂が見えてきた
檜ノ塔から見たパノラマ展望(クリックで拡大)
檜ノ塔山頂。今は雪庇が最高峰 檜ノ塔北斜面は絶壁状
檜ノ塔から見た鳥甲山 檜ノ塔南西尾根を下る始める。入口分かりにくい
まだ傾斜はそれほおではない この付近はかなりの傾斜
まだ急傾斜区間 振り返る。木が無いのは雪崩が発生するためかも
やっと傾斜が緩む
標高が落ちるとブナへ変わる 久しぶりに地面が見えた
緩斜面帯に入る 黒いピークが1490m峰
再び急な尾根を下る 傾斜が緩むと尾根がバラけ西に進路を取る
下ってきた尾根 唐松植林帯を進む
1282m峰がいい目印になる トラバースしつつ高度を下げる
栃川にかかる地形図に記載がない橋 手摺は無いが幅は充分
雪に埋もれた林道を歩く 下ってきた尾根。傾斜があるように見えないのだが・・・
除雪終点は近い 除雪終点
国道から見た檜ノ塔
国道から見た1714m峰


 苗場山台地西側にある大岩山と檜ノ塔に登る。夏道は無く地域的、標高的に激笹藪が予想され、雪がある時期しか登れない山。ネットで記録がないか検索したところ発見できたのは僅か1件、毎度おなじみのDJFであった。

 DJFのルートは秋山郷を起点として大岩山北西尾根を登り、檜ノ塔南西尾根を下る周回コースだが、上り下りとも等高線が密で雪が付いて通過可能か不安を覚える(DJFは残雪期にピッケル無しで周回)。安全ルートは東側の神楽ヶ峰経由で苗場山山頂を越えるものが考えられるが、行程が長くなるし無駄な登りも必要となる。ダメ元でDJFと同じルートで決行を決定。

 前日は下界では冷たい雨で山では新雪が積もった可能性が大きいが、決行当日は新潟は快晴の予報でラッセル覚悟で出発。秋山郷の里は新雪はなかったが積雪はまだ2m近かった。空は快晴。ただ気温は思ったほど下がらず雪の締まりは期待できない。ラッセルも考慮して重いがスノーシューを担ぐ。今回は気合いを入れて12本爪アイゼンにピッケルを持つ。お助けロープを持っていくはずだったが忘れてしまったのが不安材料。

 人家が終わるところで国道の除雪もおしまい。しばし雪に覆われた国道を辿るが予想通り雪が緩く踏み抜き多発で早々にスノーシュー装着。先が思いやられる。日当たりのいい南斜面の方が雪が締まっている確率が高いので目的の尾根を巻いて南斜面に出てから登り始めた。落葉広葉樹林で積雪で地面は見えず藪も無し。適当に上を目指す。同じルートで登った人のものか、それとも林業関係者の目印か数カ所のブナに目印が巻かれてあった。

 尾根直下は急傾斜で少し雪庇気味になっていたが難なく稜線に到着。この尾根を詰めれば大岩山だが途中に超急傾斜尾根が待ちかまえる。ここを登れなければ今回は撤退しかない。尾根上は平地より雪が少なく、尾根北側直下は地面が出ていた。驚いたことに不完全だが笹や小灌木を刈り払った形跡があり、薄いながら夏道があるようだ。山頂まで続くとは思えないが、標高の低いところで雪が消えた時期でもこの尾根は使えそうだ。

 標高1380m肩直下で最初の挨拶のような急な尾根登り。雪がほとんど落ちてしまってスノーシューのまま歩くのはやっかいで登山靴に換える。まだ雪が無いのでアイゼンの出番ではない。薄い灌木に掴まりながら急な尾根をクリアすると小鞍部は雪が続いているが、北側は地面が出ている。でもまだ藪は薄く雪の恩恵はない。

 しばし緩い尾根を上がっていくと、標高1440m地点で尾根の様相が一変する。今まで明るい落葉樹林だったのが暗い針葉樹に覆われ、岩混じりの猛烈な傾斜で立ち上がっていた。雪はほとんど見られないが、この先は等高線の混雑した区間に突入することから、ここでアイゼン装着。今回の第1関門に突入。基本的に雪は無いが雪が解けて凍ったらしいテカテカのアイスバーンが登場、12本爪でよかった。周囲の灌木に掴まって慎重に岩場をよじ登る。そう、「よじ登る」の表現がぴったりの場所であった。標高差は約30m程で危険地帯を突破、傾斜が緩むと同時に再び明るい落葉樹林に変貌した。ここで目印発見、やはり他にこの尾根の利用者がいるようだ。

 この後もそれなりの傾斜の尾根が続くが尾根の幅は広いし、先の岩場より傾斜は緩く全く危険を感じない登りが続いた。未だ積雪量は少なく尾根上のあちこちに地面が顔を出したままだし、そこに出ている藪は薄い。もし大岩山までこの植生なら無雪期でも楽勝だが。

 標高1680mを超えると傾斜が緩みはじめ、この尾根の顕著な肩である1714m峰で平坦地に変わる。ここで前半の危険地帯が終わって一安心。肩に出ると同時に豊富な残雪が出現、地面が見えないどころか藪も全く見えない。積雪量は不明だが少なくとも1mは超えているように思えた。まだ木の幹近くの雪に穴が開いていないので、かなりの積雪量だと思う。よってこの先の無雪期の藪の状況は不明である。この先はスノーシューにスイッチ。

 予想通り昨日の下界の雨はここでは新雪で、深さは10cm〜場所によっては20cm近くある。今の時間はまだ気温は低めで雪はサラサラでまだマシだが、気温が上がって重くなるとラッセルがきつい。檜ノ塔まで距離があり、横移動でもラッセルによる疲労は相当なものになりそうだ。当然、ここまでの間で人間の足跡は皆無。カモシカとウサギや他の小動物ばかりだ。目印も岩場通過直後から見あたらない。

 大岩山に向けて緩やかな尾根が続くが、南側は絶壁や急斜面の連続で、尾根直上の崖の縁を歩いていて足下の雪が崩れたら一巻の終わりなので、やや北側にずれて登っていく。シラビソ樹林で日当たりが悪く、いっそうラッセルがきつい。スタートから3時間を軽く超えて休憩したいところだが、大岩山までもうすぐなので休まず頑張ることに。新雪の下の古い雪は大きく踏み抜くことはないが、常時数cm沈むのでいっそうラッセルがきつい。

 最後に傾斜が少し出てきて山頂かと思ったが、これは手前の1930m峰でGPSで山頂までの距離を測定したら数100mあってがっかりする。隙間が多く明るいシラビソ樹林を東に進むと右手(南)に尾根が張り出した場所に到着。ここが地形図の大岩山山頂だった。南に延びる尾根も同じような高さだが、地図では尾根根元に三角点があることになっているので間違いない。が、積雪は数mはありそうで三角点の痕跡は微塵も感じられない。周囲のシラビソには目印も皆無。埋もれて見えないのか、何もないのかは不明。場所を選べば南から東にかけて展望が開け、目の前には佐武流山が大きい。東に見える真っ白な山々は谷川連峰で、その奥にドーム状に見える白い山は日光白根に違いない。左に目を移すと燧ヶ岳とピーキーな景鶴山。天気は快晴。弱い南風で寒さは感じない。このままでは顔がひどく日焼けするのは確実なので今シーズン初めて日焼け止めを塗った。

 しばしの休憩後、檜ノ塔向けて出発。日差しで雪は緩んで下りのスノーシューでも足が重い。東に尾根を辿り、北に尾根が派生する辺りで進路を左に振るが、どこも緩斜面帯なので尾根直上にいるのか判断に苦しむ。最低鞍部のやや北側を通過、標高1850m付近まで上がって以降は延々と続く緩斜面を横移動の予定だ。周囲はシラビソ、檜、ダケカンバの樹林で覆われて展望はなく、檜ノ塔の姿も見えない。等高線に沿って移動するだけだ。たまに樹林がぽっかり切れて開けた空間が登場するが、たぶん池塘や湿地帯であろう。今は真っ白なただの雪原。

 いくつか大きな谷を越えるが、少々アップダウンがあるがショートカットしてラッセルの距離を縮める。予想以上の疲労で頻繁に新雪を口に運んで水分補給、膝も痛くなってきた。早く下りにならないかなぁ。最後の谷を越えて檜ノ塔へと緩く登る斜面は牛歩ペースに落ちていた。

 檜ノ塔周辺は顕著なピークはなく、GPSが無いと山頂特定は難しい。樹林を抜けて広い雪原帯に入ると奥に小さなピークが見えた。周囲は真っ白で遠近感が無くピークの大きさがいまいちイメージできずそこそこ高いピークかと思って重い足で進んでいくと、高さ2mほどの雪庇の高みだった。そしてGPSはそれを檜ノ塔山頂と示した。崖っぷちの台地の一角で三角点は雪の下で確認のしようがない。目印類も皆無、というか、この付近は立木がないので付けるにも付けられない。10mほど離れると小さな木があり、そこに目印を残した。ここまでの歩行で体力を消耗、ザックを敷いてひっくり返って1時間も休憩した。日差しは暑いくらいだった。

 下山に使用する尾根も関門だ。地形図を見る限りでは部分的には登りで使った尾根より傾斜は急かもしれない。それでも周囲の地形の中では一番傾斜が緩いので、ここを下るしかない。まずは尾根の入口捜索から難航。台地状の平坦地で尾根入口は広く、少し下らないと正しい判定ができそうにない。しかも猛烈な傾斜で樹林で視界が遮られれば尾根下部の様子も見えず、正しい尾根に乗ったか確認できるまで時間がかかりそう。予想通り読図困難な尾根入口で迷い、最初は北寄りを下るところだったが傾斜の変化が急すぎるので違うと判断、1本南にずれて小尾根らしい地形に乗るとずっと尾根らしくなり、標高に対する傾斜の変化も地形図に一致した。はじめこそ不安なく下れる傾斜であったが、途中から猛烈な斜度に突入、尾根が広いからマシだが痩せ尾根だったら下る勇気があるかどうか。尾根直上より北側で木が生えているが密ではなく、滑れば止まりそうもない。しかし気温が上がって雪が緩み、アイゼンでは膝までズボっと潜る雪質で滑落の心配はあまりせずに済んだ。私にとっては前を向いて下れる限界の斜度だろう。逆周りでこれを登るとなったら地獄だな。少なくともこの雪質で登るのは相当の時間がかかると思う。

 やっと傾斜が緩んできて木が無く開けた尾根直上に進路を戻す。下部の様子がよく見えて標高1490m峰とつながる平坦地の東端へと向かう。さらに標高が下がるとブナ林に変貌、平坦地に降り立った。ここで再び尾根の傾斜がきつくなり、尾根入口が不明瞭になり地形図と睨めっこして平坦地東端から下りにかかると無事尾根らしくなる。先ほどまでの傾斜はなく精神的に余裕がある。標高1400mで傾斜が緩むと唐松植林帯に変わり尾根が四分五裂、地形が複雑化して主尾根がどれなのか判断できない。しかしこの辺りで主尾根を外して西に向かわないと崖マークの餌食になるため、進路を右に振り小尾根を下る。ここで1282m峰が目に入り、この南側を巻くよう下ればいいので安心材料。南斜面には夏道があるはずだが積雪で跡形もない。

 夏道どおりに行くと遠回りして除雪終点に戻る必要があるため、DJFが発見した地形図にない橋を目指して栃川へと下る。ただし、右岸側は崖マークがあり降りられる場所は限定されるので、沢へと小尾根が伸びる場所を探して下流方向へ下り、行けそうな箇所で沢へと向かう。沢が近づくとスノーブリッジかと思われた狭い雪の橋は、DJFが渡った赤い橋に雪が積もったもので、ドンぴしゃで橋の袂に出たのであった。ラッキー! 欄干は外されているが人1人が渡るには十分な幅があり安心して渡れた。対岸は雪に埋もれているがたぶん林道終点で、人間の足跡があった。ここでアイゼンからスノーシューに換え、雪の林道を歩いて車に戻った。

補足にヤマレコの記事もどうぞ(PDFファイル。ここをクリック)

 

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